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■貸主側の事情と実態 さて、一応考え方は示したが、ここに書かれている敷金・原状回復の考え方ことを、世間の不動産屋・大家さんが100%守っているかどうかというと、それははなはだ疑問だ。よく、テレビや雑誌で、「悪徳大家!敷金を返せ」みたいなセンセーショナルな見出しで敷金を返してくれない体験記などが載っているが、私からみると全然特別なことではない。 何回も引越しをしている人は分かると思うが、敷金が全額返ってきたことの方が少ないはずだ。それだけ世間では多くの部分を借主に負担してもらっていることがとにかく多いばかりか、大家さん・不動産会社も「入居者が全部負担するもの」と信じきっている人も珍しくないのだ。 ●敷金トラブルの発端は何か 以上のとおり、実態は法律の考え方と、世間一般大家の認識が大きくかけ離れており、これが敷金トラブルとしてしばしば勃発する。ここでは、頭ごなしに悪徳だ過剰請求だとか言うことはせず、より現実的な話をしよう。 ●こんなケースがよくあります もう年のせいか、日ごろ面倒見もよく、人当たりの良い非常に良い大家さん。大変お世話になった。このたび、結婚を機に引越しすることになった。大家さんも喜んでくれた。今までのお礼と挨拶も済まし気持ちよくおさらばしたつもりが、後日、敷金を返してもらいに立ち寄ったところ、返ってくるどころか、ニコニコ顔で逆に補修費の追加請求をされた。 ●請求している大家さんに悪意はないことも こういうケースの最も大きな問題は、大家さん自体が「過剰請求している」という認識が全くなく、当たり前だと思っているということだろう。確かにあなたが公的機関なり、裁判に訴えれば敷金の大半は帰ってくる。しかし、このお年よりの大家さんは、感情的にあなたを逆に「恩知らず」と見るだろう。あなたとしても今までの良い関係を反故にして、大家さんと争いたくない。しかし文句を言わないと敷金は帰ってこない・・・<BR> まさにジレンマである。どうするかはあなたの判断に任せるが、選択肢は2つ。一つに、言われるままにお金を払う。確かに払わなくても良いお金かもしれないが、お世話になったから最後に立つ鳥跡を濁したくない人、運が悪かったとあきらめるのも一つの手。次に大家さんとの今までの関係を反故にして抗議なり、裁判なりをする方法だ。 ●自然損耗の定義もあいまい。できるだけ話し合いを! もっとも、本当に100%敷金が帰ってくるかを一言で言うにはあまりにも曖昧な部分がある。普通に生活した汚れは大家負担とは言うものの、あらかた借主は「普通に使った」貸主は「使い方が悪い」と主張する。つまり「普通に使っていた汚れ」とはいったいどこまでを言うのか。」という問題がある。クリーニングで落ちる程度のタバコのヤニは自然損耗として大家負担というのが国の考え方だが、では「クリーニングで落ちる程度」とはどの程度なのか?考えようによっては全部クリーニングで落ちないこともない。往々にして「落ちる落ちない」の水掛け論になるのが関の山だから、これをハッキリと線引きするのはかなり難しい話だ。その他の例としてはカビ。立地の問題なら大家負担、手入れの問題なら借主負担と言うのが一般的だが、これも「立地の問題だ」、「いいや手入れが悪い」の水掛け論だろう。 ●妥協点・落しどころが肝心です このあたりも含めて考え、多少妥協できるラインを持たないと、大家さんサイドと大もめにもめ、全く収集が付かなくなる。敷金を100%取り戻すということに固執せずに、先に示した自然損耗の考え方を参考にあくまで話し合いで解決したい。 >>特約のある場合 |